【対策】適性検査

【2022年度】横浜市立南適性検査Ⅱ分析!

こんにちは!公立中高一貫校合格アドバイザーのケイティです。

ケイティ
ケイティ
市立南ご志望のみなさん、大変御待たせしました~!(←誰も待ってないかも知れませんが…)今年の南分析、始めていきます。

市立南、ずいぶん解きやすい問題になっている印象です。以前は解答を見ても「そ、そうなの?」という超難問算数(特に平面図形)がありましたが、

  • 徐々に難易度が上がっていく階段方式
  • ごく一握りしか解けないような際どい問題が無くなった
  • 大問ごとに大きな難易度の差は無し
  • 情報整理、数を扱う力、処理速度、土台となる計算力があって最後までたどり着けるため、「学校側が取りたい層」が上から綺麗に並ぶ構造

このようなつくりになっていると感じます。

都立のように、算数壊滅でも適Ⅱが1桁でも受かってしまう、というつくりの場合は、入る子も受け入れる方も大変になってしまいますが、横浜市立型はその点、かなり洗練されたつくりになっていると個人的に思います(生意気なことを言ってまた肩身が狭くなりますが、やっぱり、入ってから違和感を感じて行き渋りが起こるのが一番かわいそうだと思うので…)

大問ごとにずば抜けて高難易度のものが控えているわけでは無く、一定レベルに統一されていて、かつ、どの大問も最初の問1は簡単、そのあと段々難易度が上がる、という仕組みになっています。

つまり、基本問題にも苦戦する子、基本問題が取れる子、基本も取れて応用も取れる子、に分けることができるということです。

とはいえ、このような大問が(しかも会話も長いし資料もややこしい!)4つもあるので、もちろん時間は厳しいです。私も45分で全部解けと言われると、かなり冷や汗をかく自信があります。

大問が4つあることで、さきほどの
基本が取れない子
基本が取れる子
基本も取れて応用も取れる子
の「散らばり」がよりはっきりと分かれ、

さらに時間という負荷がかかることによって、
基本が取れない子
基本が取れる子
基本も取れて応用も取れる子
基本も取れて応用も取れて、かつ高い処理速度(要領の良さ)がある子

こんな4層に分けることができる、ということです。南高がどの層を取りたいかは明白ですよね!(ちなみに、問題の作りは違えど、この戦略で取りたい層を選ぶという点では神奈川県立も同じです)

もう少し深く突っ込むと、マイナスの概念円周率の起源といった、算数(数学)分野に日常的に興味がある子ならサラッと理解できてしまうような問題をちりばめることで、上記の4層目の中でも「科学的思考能力」を持っている子が有利になるような狙いがあると感じます。

考えれば考えるほど、市立南の問題の質の高さには惚れ惚れしてしまいます。凄い完成度です。

では、このあとは大問ごとに細かく見ていきましょう!

ケイティ
ケイティ
対策の何かヒントになれば嬉しいです!男女枠も無くなりますし、何かと厳しい戦いになると思いますが、応援しています✊
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大問1:温度計

温度計が会話の切り口になっています。一瞬、理科っぽいですが、算数の問題です。

問題1

10度とマイナス2度の差を求めさせる問題です。

大人からすると瞬時に答えは出せますが、数字の正と負についてきちんと学ぶのは中学に入ってからなので、会話文の中にきちんと考え方の導入があるとは言え、1問目から戸惑った子もいたかもしれませんね。

公立中高一貫校の適性検査では、小学校と中学校で縦断するように習う単元がよく出題されています。
中学に入ったあともきちんと通用するような興味や関心を持っている子であれば、問題1は数秒で解くことができたと考えられます。

問題2

サイエンスフロンティアの適Ⅱのように、「聞き慣れない」「見慣れない」さらに「長めのカタカナ」と言うコンボが資料や会話文で繰り広げられている問題です。

セルシウス、ファーレンハイト、ケルビンといったややこしいカタカナにもあせらず対応したいところです。
例えばですが、ファーレンハイトは【フ】といった感じで、自分なりに省略単語で情報を整理するなど、普段の過去問演習の中で培った要領の良さを発揮したいですね!
これも一朝一夕にできることではありませんから、直前期になったらサイエンスフロンティアはもちろん、千葉のように小学校の範囲を超えているようなテーマを切り口として平然と扱うような学校を使って、迅速に資料を読み取る訓練をしておきたいところです

計算自体はややこしい事はありませんが、何と何を比べているのかが途中でわからなくなる子が多そうです。
例えばセルシウスとファーレンハイトを比べたり、ケルビンとセルシウスを比べたり…といった感じで話が進むので、「何と何が今は会話の中心になっているのか」を見失いやすいです。(これは、適性検査あるあるです。)

特にややこしいカタカナが連発しているような文章ではなおさらそうなるので、聞き慣れない単語が出ても「焦っているのは皆同じ!」と落ち着いて、みなみさんと先生(登場人物)の会話に一緒に参加しているつもりで落ち着いて読んでもらいたいです。

また、計算は会話文の中だけの情報で解こうとしても混乱するので、自分なりに線分図で表すようにすると、少し楽ですよ。
これは算数・理科問わずですが、会話文の中にちりばめられている数値をそのまま国語の文章として読むのではなく、瞬時に余白を使って線分図にしたり表にしたり整理してみる…これは、神奈川が市立・県立問わず強く求めている能力だと感じます。

今回なら「温度」がテーマですし、高い/低いが視覚的にとらえやすいよう、横向きよりも縦向きの線にして、線の左側にセルシウスの数値、右側にはケルビンの数値を書く、といった感じの工夫がおすすめです。
横向きの線分図は慣れている子も多いですが、年齢や所持金、温度、身長といった上下や高い低いがあるような題材は、縦向き↕にすると理解しやすいです。

今回のセルシウスとケルビンなど、2つの異なる尺度を持った単位を比べさせる問題は、例えばお金の問題(昔の通貨と今の通貨、為替)や長さの問題でもよく出ています。
前、サイエンスフロンティアでも「表目の一寸」と「裏目の一寸」を使った換算の問題があったように思います。
単位が変われば1メモリ分が意味する幅も変わって、これがまた大人も投げ出したくなるほど混乱を招きやすく、数を扱う力の差がはっきり出る=狙いやすい単元といえます。

そういえば千葉でも、顕微鏡の倍率を変えたときに1メモリが表す長さについて考えさせる問題が過去に出ていたことがあります。(私は途中で投げ出してふて寝した覚えがあります)

全国の過去問、特に神奈川のようにハイレベルなエリアの学校の問題をしっかり解いておくことで、「自分だったらどう整理すれば解けるのか」が感覚的に身についていきます。
私の場合だと、頭が混乱して訳が分からなくなったと感じたら、一旦全部リセットして情報を整理してみる、線分図にする、「たぶんこの辺の答えになるだろう」と予測してから解いてみる…このような方法が自分には向いていると自分で分析しています。これは、何度も投げ出しては戻り諦めては試し、、の繰り返しで仕方なく(?)身に付いた「自分の攻略法」だと思います。
ぜひ、ややこしい問題にもたくさんチャレンジさせて、自力で何とか方法を編み出すまで見守ってあげてください。

問題3

選択肢から1つだけ選ぶような問題になっています。

これは過去の過去問題でもそうですし、県立でもそうなのですが、混乱して誤った解き方で出した答えも、選択肢としてはちゃ~んと用意されています。
これが非常に巧みだなと感じるところですよね…。

焦って出した答えが選択肢にあると、どうしてもその選択肢に飛びついてしまいがちです。

「よかった!選択肢にある!このやり方で合っていたんだ(ホッ)」という感じで、
ついその選択肢を疑わずに選んでしまいそうになりますが、問3まで来てそんな親切な問題のはずがない、と冷静に検算して本当に間違いはないか確かめることで、巧みに用意された落とし穴にはまらず済むかなと思います。

問題4

問題4では、水銀をテーマに問題が進んでいきます。
水銀はマイナス39℃で固体になり、357℃で気体になるそうです。

この396℃分の幅を、0から100までの新しい単位(°Hg)を使って表すという問題です。

これは単純に割り算をするだけなので全く問題ないとは思いますが、357度と言う高温からマイナス39度までの温度の幅は、当然0度の上(+)と下(-)に及ぶわけですから、冒頭に出たマイナスの概念がきちんと理解できていることが前提です。

マイナスが絡むことで、足せばいいのか引けば良いのかもわからなくなってしまった子ももしかしたらいたかもしれません。
混乱を防ぐためにも線分図で表すことができていれば、プラスであろうとマイナスであろうと、0度を境にしてマイナスの分とプラスの分を足せば良い、ということが視覚的に理解できたはずです。

のように、余白に何かしらわかりやすく自分なりに整理した図が書けると、その分ミスを防ぐことにもなるので、日ごろから頭の中だけで考えないようにと声をかけ続けてください。

(2)はややこしいです。
普段私たちが使っている温度℃と水銀を使った新しい温度°Hgの測り方をクロスさせて、11℃は何°Hgか計算させる問題なのですが…。

これも、マイナス39℃と11℃の差が何度分あるのか…、何度も繰り返しになりますが、マイナスにひるまず、39と11を足せたかどうかです。
また、39+11は繰り上がりがあるのでうっかり間違って40や60しないようにしたいところです。当たり前のことだと思うかもしれませんが、余白にちょこちょこっと(ぐちゃっと)小さく筆算するような子は、繰り上がり・繰り下がりミスがホントに多いです。

なお、細かい途中式は省略しますが、最終的には1250 ÷ 99をすれば答えが出ます。
(50/396×100⇒396も100も4で割れるので、50/99×25⇒1250/99)
この、「99で割る」という計算も、嫌~な感じしますよね(^-^;
時間に余裕があるときならなんてことないですが、まだ大問1しか終わっていない😨という超焦りモードの中、4桁を99で割って小数点まで出さないといけない…という状況で、いつも以上に計算に時間を取られた子もいたかもしれません。

割りやすい数字ではなく、あえての99をチョイスするあたりも、土台となる計算力の高さが求められていると感じます。

さて、ここまでで一旦、大問1についてまとめてみます。
この大問1で求められるのは、今、何の話をしているのか、を見失わない&そのために必要な資料はどれか、を瞬時に見つけ注目する、という情報整理能力がまず一つ。
さらに、比を使ったり図表を書いて視覚化したり、3~4桁や小数点以下に及ぶ計算も素早く正確にこなせる、といった、一朝一夕では身に付かない能力。
これは、算数にしっかり時間をかけてきた子が持っている数的感覚の鋭さ(=要領の良さ)とも言えます。
最後に、マイナスの概念が出てきても抵抗がない数への興味関心、この辺も求められている問題といえます。

では、続いて大問2に行きましょう!

大問2:多面体

横浜に限らず、適性検査では「出て当たり前」ジャンルの一つ、立体です。

多くはサイコロ(展開させたり転がしたり積んだり抜いたり色塗ったり)ですが、今回は多面体の頂点や辺の数をカウントさせるところから始まります。

問題1

正八面体の頂点と辺の数を数えます。これも全国的によく見かけますし、100%正解しないといけない問題です。

注意点としては、

  • 焦らずに図の裏側も想像すること
  • 数えてすぐ書くのではなく、別方向からもカウントしなおして検算すること

この2点です。南の適Ⅱはどの大問も、問1は取れるはずの問題になっているので、ここでウッカリミスを起こすわけにはいきません。

今回の図1なら、上から数えて答えを出す⇒次は下から数えて同じになるか(ダブりや漏れがなく最初に出した答えとちゃんと一致するか)をサッと確認したいところです。

こういった検算は、習慣になるまでは口酸っぱく伝えてください。検算する時間なんてない!と言われますが、問1レベルの問題であれば、数え直すのもほんの数秒のロスです。気持ちが焦るのはもちろん分かりますが、落ち着いて確実に点を積み重ねてもらいたいと思います。

問題2

今度は、ヘンテコな展開図を例に出し、「コレ、正多面体できますか?」と問う問題です。

どう見ても無茶苦茶な展開図です。
ちなみに、この図2を見て、「え~?なんで?組み立てれば何か立体になるんじゃないの?」と思う子は、立体が結構苦手な部類に入ると思います。なるべく早めに、立体対策の参考書を取り入れてみてください。

この問題のポイントは、

  • 「つくれない」理由を説明しないといけないこと(横浜市立を受検する子は、算数記述にあまり慣れていないはずです)
  • 「特徴をふまえて書きなさい」「具体的に書きなさい」という条件(しばり)があること

この2つです。

神奈川は川崎市立は別として理系記述は多くないので、ほとんどの受検生が「説明すること」にあまり慣れていません。

これは悪いことではなく、特に横浜市立と神奈川県立は「説明できる」より「解ける」能力の方を鍛えた方が点になりますから、全く問題ありませんし、作問側も、長々しい説明は求めていません。
答えを見ても分かるとおり、いたってシンプルな記述です。

また、条件があるとそれを満たさないと点にならないという厳しさがありますが、条件があるイコール答えの筋道のヒントがある、ということです。

今回なら問の中に「特徴をふまえて」という条件がありますが、「特徴」というワードは【資料】の「~特徴をすべてみたす…」にも登場しているため、「ここを使わなきゃ加点されないな」と推測できますね。

さらに、「具体的に」という条件から、「具体的な単語、たとえば、面の名前や頂点の数といった具体的な情報を入れなければ加点されないな」、と推測できます。

「こういう内容が無いと加点しませんよ」という大大ヒントが、「条件」だと考えてください。

まとめ。記述はありえる。ただし、シンプルで、条件がヒントになっていることをふまえ、落ち着いて条件を満たせば得点源になる。長々しい算数記述の対策は不要。

問題3

正十二面体の頂点の数を求める式と、答えを書きます。

今回は正五角形が12個組み合わされていますが、たとえばサッカーボールのように正五角形・正六角形が組み合わされた立体の辺の数や頂点の数をカウントさせる問題は頻出です。

考え方は簡単なので、サイコロで説明しますね!
正方形(辺が4本ですよね)が6枚、部品として使われています。すると4✖6=24本の辺があるはずです。
ただし、サイコロを想像してみると分かるように、1つの辺は、二つの面で共有していますね。つまり、2つの辺が合体して1本の辺になっているということです。
ということで24本の辺が2本ずつ1セットになると考え、24÷2=12辺、という考え方をします。

このように、①まず全部バラして考える、②重複カウントしている数で割る、という考え方で出ます。

適性検査では年に1~2回はこの問題は出ているように思うので、「あ~、アレか」とひらめいた子も多かったはずです(^_-)日頃の演習量がちゃんと活かせますよ!

問題4

立体の頂点をカットしていき、残った立体の面や辺の数をカウントする問題です。

頂点をカット…というと難しそうですが、大根などの「面取り」と同じように、頂点のとがったところを綺麗に切っていくのと似ていますよ!(ちなみに、「なぜ面取りするのか」という問題も他校で出ています。面白いですよね~)

この問題の図6ではきちんと裏側まで点線で書いてくれているので、イメージしやすいです。
まずは面取りしたときにあらわれる五角形を図に書き込んでいくと、規則が見つかります。

元の面である三角形の辺や面と、新たに現れる辺や面をきちんと表やメモを余白に書きながら計算していくと、正解できる問題です。
もちろん、問1のように検算は必須ですね!

大問3:円周率

円周率はどうして3.14…なのか?
どうして3より大きいのか?
どうすれば出るのか?

このような「疑問を持って円周率を解明(自力で検証)しようとする問題」は、全国的に年に1回程度はどこかしらで出ています。最近ちょっと増えてきた印象です。

丸暗記で済まさず、習ったことに対して「どうして?」と思えるかどうか、ですね。算数に限らず、理科社会あらゆる学問に対して、「ホントかな?」「なんでかな?」と思える子は適性型の問題は合っていると思います。とはいえ、これは自発的にできる子とそうでない子がいるので、日頃から「不思議に思ったことを親子で調べてみる」「なんでだろうね?と知らないフリして聞いてみる」というような関わり方をしてみてください。

話を戻しますが、円周率問題は、大抵は多角形と組み合わせてその外側、内側に円を設置して…という風に出していきます。
この円周率を自力で出させる問題は、最初はみんな間違える問題だと感じています。

全国的にポロポロ出ているので銀本を演習していればどこかで出会った問題のはずですが、一回目に間違えたとき、きちんと復習をして「あ~、だから円周率って3より大きいんだ」と、誰かに図を書いて説明できるレベルで納得できていれば、この問題も解けたかと思います。

今は、「銀本を解く事」は公立中高一貫校対策の当たり前になっています。似たような問題が繰り返し繰り返し出題されているため、銀本演習量が得点に結びつくのは当然だからです。
一昔前に比べたら銀本を2,3冊終わらせました~という子は増えましたが、その一方で、「とにかく消化すればいい」という考えの子も増えたように感じています。

ややこしい思考力系の問題ばかりだからこそ、「間違っちゃった」で終わりにしていては、似た問題でまた間違えます。また、そっくり同じ問題が出る訳ではなく、同じテーマでも少し変化球になっていたりするため、中途半端な解き直しでは太刀打ちできません。

日々の取り組みも、解くこと・解き直すこと・理解すること、きっちりと丁寧に進めてもらいたいと思います。まどろっこしくても、必ず本番の自分の力になるので(^_-)

問題1

(1)と(2)があります。
いろいろなパターンから円周率を出させるという面白い問題です。

これをお子さんに解かせてみて、たとえば7.…や1.…など、あきらかに円周率(3.14…)からかけ離れた答えを出した場合は、注意が必要です。

円周率はいくつになりそうか、と聞かれているので、どう考えても3.14付近の答えになるはずですよね。
にもかかわらずそこから乖離した答えを出した場合は、「答えがいくつくらいになりそうか」という事前予測をしていないことを意味します。

どんな算数問題も、「だいたいこの辺の数字になるだろう」という予想をしないと、明らかにヘンテコな数値が計算が出た場合にも、ミスに気付くことができません。

これは、神奈川共通問題でも同じで、選択肢の中には「冷静に考えたらおかしいでしょ!」という引っ掛けがあるのですが、計算ミスに気付かずその選択肢を選んでしまう子が結構多いです。選択肢問題に限らずとも、歩幅を出したり面積や人数を出すような問題で、ギャグのような数値を大真面目に書く子がいます。
答え合わせで気付くと爆笑するのですが、解いているときは気持ちも焦っているので、ありえない答えがありえないと気づけないものです。だからこそ、「まず答えの目星をつける」という癖をつけておいてください。

今回も、円周率を出すよう言われているのだから、3前後になるはずです。それをふまえて、計算すればOKです。
(2)は円周率なのに重さ(g)が絡むという、非常に面白い問題ですね!最近は、こうやって単位が複数登場して「一体いま僕は何を求めているんだっけ…?」と混乱してしまう問題が流行っています。都立でもg、㎤、㎜、〇滴…など、色々な単位で大混乱が起きる問題が出ています。ぜひ近くなったら都立の適Ⅱ大問3や、適Ⅲがある学校の算数・理科問題も演習用にチャレンジしてみてください(学校HPに問題が載っています)

問題2

正20角形までの一辺の長さがしめされ、それを使って円周率が3.1より大きいことを証明します。

これは、大人でも戸惑うくらいの面白い問題です。計算自体は非常に単純ですが、どこから手を付けていいか分からないと、時間をロスしてしまう問題だと思います。

この問題では円の中にぴったり納まる多角形が登場しますが、初見であれば「なんで円の中に入れているの?」という問題の意味から読み解かないといけません。
でも、他県の問題でこれを解いたことがあれば、「正多角形が円の中にぴったり収まっているから、円周よりも正多角形の全周の方が短い」という考え方が思い出せるので、問題の理解に時間を取られずすぐに計算から始めることができます。

南の適Ⅱは、埋めないといけない解答欄がおよそ30個あります。そのうち1つ2つは小さな記述もありますし、選択肢問題もあるので、45分で全て埋めようとすると相当厳しいですよね。
「どこかで沼にハマるとその後の問題はほぼ手つかずになる」ということです。これは意地悪ではなく、要領の良さや、冷静に時間管理ができるかどうか、取捨選択できるかどうか、です。

コレは本番当日いきなり出来ることではないため、冷静な時間管理ができる=(イコール)、1問あたりにかけられる時間が体に叩き込まれるほどの過去問演習をこなした子である&他県の算数問題も積極的に解き、似たジャンルの問題に触れてきたからこそ迅速に解く力を身に付けた子である、という意味です。要は、それだけ入学を熱望し努力できた子である、というバロメーターにもなると考えます。

この問題は、

6<(直径)×(円周率)
したがって、
3<(円周率)

と書かれた資料があるのですが、
まずこの式の意味に「はい?」と思う子も多かったのではないでしょうか。(パッと見ると、(直径)はどこいったの?「3」はどこから現れたの?とびっくりすると思います)

問題をよく読むと、直径が2mなので、あてはめると、
6<(直径つまり2)×円周率、になり、
左側と右側を2で割ると、
3<(円周率)
と変換できます。
この、両側を2で割るという流れにピンと気付けるかどうかも、数を扱うセンスを問われますね。
ただ、この「センス」も、南の場合は適性検査の演習量という努力でカバーできる難易度設定になっているところが、本当に絶妙だと感じます。

あとは、あてはめていくだけです。

正多角形の周りの長さは、一辺の長さが表になっているので分かりますね。極端に言うと、一辺が1mで正十角形なら1×10をすればいいわけです。
そうやって全周を出して、
全周 < 直径2m×円周率
の両側を2で割って、
全周÷2 < 円周率
に変換します。

これで3.1より大きくなればいいわけです。
そこで全周を出していきますが、表1を見ると、正7角形から正20角形までありますね。このとき、上から順番に出さないのがポイントです。(神奈川共通も似た問題が多いです)

上から素直に正7角形(0.867×7)、正8角形(0.765×8)、正9角形…と出していくと、明らかに時間のロスです。

このように上から順に並んでいるときは、必ず「真ん中あたりから試す」のがコツです。今回なら、真ん中あたりは正13角形あたりですね。まずここから試します。
それで足りなければ下の段を試し、多すぎれば上の段に戻します。上から律儀に一段ずつ試すのではなく、(大体答えが一番上や一番下になることは少ないですし)真ん中から試して目星をつけてから徐々に答えに近づいていく、というふうに、「いかにラクして答えを出すか」を意識するのも、時短のポイントです。

問題3

選択肢問題です。「全て選びなさい」という選択肢、神奈川エリアでは頻出ですが、この指示って怖いですよね…ハッキリとマルバツが分かるものばかりならいいですが、判断に迷う微妙な選択肢を入れるか入れないかの賭けになることも多いです。

特に1問につき数分しか猶予がない南の場合、4つの選択肢を全て検証しなければいけないのは相当気持ちが焦りますよね。日々こんな問題と向き合っている子供達に、ホントに頭が下がる思いです。

全て選べと言われて答えが1つ、もしくは全て正解、であることは考えにくいので、選択肢が4つの場合、答えは2つか3つのはずです。意地悪な選択肢はないので、敵は時間と計算ミスだけです。

といって、たとえば「3分の4」と「15分の16」のどちらが1に近いか?と言われても即答できる子は少数派かと思います。落ちついて考えれば簡単なことですが、焦りマックスの状況なので、冷静さと数的感覚の強さが試されます。

ほんの少しだけ数列の考えも出てきますが、無茶苦茶な項数ではないので、書き出せば何とかなります。私立中学受験のように様々な数列が使いこなせないとダメとは思いませんが、たとえば〇番目の奇数は?〇番目の偶数は?がスッと答えられるくらいには慣れておいた方がいいです。

大問4:浮力

出ましたね~!去年、「浮力と密度出るぞ~」とサロンで話題になって類題もアップしていたので、本番終わってすぐに「出たよ~!✊」とメンバーさんからLINEが来ました🌸

ただ、、、ジャンルは当たったからといって、すんなり解けるような問題ではないのが南の怖さですよね…。

千葉っぽい引っ掛けと、都立っぽい仮説検証が融合した凄い問題だと思います。どうやったらこんな問題が思いつくんでしょうか…。

浮力やニュートン、体積…といったワードがわんさか登場するので、学校のお勉強だけでは厳しいと思います。もちろん、丁寧に読み込めば全てヒントは与えられているので解けなくはないのですが、密度・浮力・複数単位・平方数・比、、、といった中学受験ジャンルをしっかり対策してきた子の方が圧倒的に早く解けるのは間違いありません。

解けるのと受かるのは別ですから、基本的な私立中学受験分野は一通り網羅した上で、さらに上乗せする形で適性対策をガッツリ進めなければならない…これが公立中高一貫校の厳しさだと思います。(さらに、学校での評価も高くないといけない、というハードルの高さもありますね。)

南対策は、途中で体調やメンタル面に不調をきたす子が、全国の受検生の中でも多いと感じています(あくまでも私の経験です)

高い壁なので、支えるお母さんお父さんや子供達本人が抱える負担は計り知れないですが、だからこそ入ってからやりがいや目標と出会える学校です。どんな結果であれ、高い目標に向かって子供のころに思いっきり頑張る経験は、宝物です。悩みは尽きませんが、頑張ってもらいたいです。

問題1

また脱線しましたが(いつまで経っても書き終わらない(T_T))、問題1です。(2)まであります。

(1)は単純で、「100gで4cmのびる。5.2cmのびた。おもりは何g?」、という問題です。

南はこのように数秒で解ける問題が問1には含まれるので、必ず正解してササっと次に進みたいですね!

ただ、さきほど「」でまとめた問題の意味も、その通りに書いてくれている訳ではなくて、会話文の中に情報が散りばめられているのが、厄介です。
また、比が使いこなせないと計算量も増えるので、情報整理力と、算数の慣れの差で数十秒の差は出そうです。

(2)はほんの少しややこしいです。ビヨーンと5.2cm伸びたバネを水中に入れたら2.8cmの伸びになったので、下から浮力で持ちあげられたことで2.4cm分縮んだことになります。

4cm分が1ニュートンなので、2.4cmは0.6ニュートンですね。
単純ですが、小数が混じると途端にハテナ?になる子も多いです。たとえば、4cmを基準にすると2.4cmは0.6倍ですが、この「1未満倍」がしっくりこないようです。
2倍、10倍、100倍…という「1以上倍」はイメージしやすいですが、「0.5倍」と言われて「あぁ、半分ね」とすぐ把握できる小学生は、意外と少ないんです。大人は当たり前に頭の中で計算できるものも、小学生には馴染みがないことも多いので、「なんでできないの」と思わず、目線を合わせてあげてくださいね。(でも確かに「倍」という漢字は「大きくなる・増える」というイメージがあるので、1未満の数字と一緒に使うのってホントは違和感ありますよね。こういう違和感を、子供達は大人より繊細に正面から受け止めて一瞬固まってしまうと考えてください)

問題2

この問題は、間違えた子はかなり多かったのではないでしょうか。

「一定」と言われて早とちりしてアを選んだ子もいたかもしれません。一定なのはあくまでも「浮力」なので、よく読めばあとは8-2や12-2という計算をするだけです。
ここまでくると残り3分‥というギリギリの精神状況だと思うので、レポートの内容を丁寧に読む余裕が無く適当に選んだ子も多そうです。
「う・え」の方は比の考え方が使えれば早いので、南の適Ⅱを全体的に総括すると、「比」の一言に尽きます。サロンの算数スタッフも、「比と割合が使えない子は中学入ってからホント苦労する」とぼやいていたのですが、おそらく問題を作った先生方も同じ解釈なのだと思います。

問題3

いよいよラストです。

円錐(パーティーのときかぶる帽子みたいな形)を水中に沈めたときの、浮力の大きさについて考えていきます。

都立でこういうヘンテコな形を水に沈めてロケットのように飛ばす、という問題がありました。ド文系の私には何が面白いのか全然分かりませんが、様々な形や深さでどのような浮力が働くのか、興味がある子には面白い問題だと思います。

選択肢問題は、まず消去法です。細かく一つずつ見ていくとキリがないですし、6つも選択肢がある場合は、基本的にありえないのが半分あるので、削っていきましょう。

このとき、頭の中だけで考えず、円錐が完全に沈み切っている絵と、ほんの少し1cmくらいだけ着水している絵と、半分くらい沈んだ絵…といった感じで書いてみると、イメージしやすいです。水槽(四角)と円錐(△)と水面(直線)だけなので、1つ書くのに2、3秒程度の作業です。でも、書くと頭も整理されるので焦ったときほど視覚化が大事です。

完全に沈めたときが一番浮力がかかるのは間違いないので(お風呂におもちゃを沈めて遊んだことがあると思いますが、それと同じです。深く沈めたときほど勢いよく上がってきますよね)、深いほど浮力が大きくなっているグラフが正解です。

そうすると、イ・エ・カが削れますね。残るは、ア・ウ・オです。円錐はどう見ても下の方が太っちょで上の方が細いので、アのように規則正しく浮力が働くとは考えづらいです。となると、ウかオですね。この2択までは、できれば辿り着いてもらいたいところです。

時間切れの恐れがあればとりあえずウかオか賭けで書いてもらって空白で終わることだけは避けてもらって、ここからはきちんと考えていきます。そこで役立つのが、余白に書いたイラストです。
ちょっとだけ沈めたときに、円錐の一番太いところから浸かっていくため、まず最初に大きな浮力がかかり始めます。(逆さ向きに細い方から入れた場合も一緒に想像してみると、分かりやすいです。)
問2で、体積が大きい方が浮力も大きくなることは誘導されたので、円錐の太い底の部分が入り始めたところで浮力も大きくかかるはずです。

となると、穏やかにのびているオよりも、ウが正しいと判断できますね。
このように、まず半分にする・余白に再現してみる、という流れで考えると2択には出来るので、あとはイメージしながら考えてみてください。

横浜市立南対策まとめ

長くなりましたが(原稿用紙33枚分!脱線が多すぎました…)分析としてはこんな感じです。

ハードな学校ですが、問題の質も、難易度の設定も、無茶なものはなく、意地悪さも無く、(地頭の良さが必要なのが辛いところですが)努力した量がちゃんと点に反映する問題です。

適Ⅰも特殊ですが適Ⅱできっちり取れれば安心なので、引き続き頑張っていきましょう!