都立中高一貫校では適性検査だけでなく、報告書も大切です。しかし、適性検査の対策に追われて報告書は二の次…という受検生、結構多いんです。
今回は、そもそも報告書って何?というところから、各学校における評点の割合、そして報告書の底上げ法までお伝えしていきます。
今回は、公立中高一貫校の中でも「都立中高一貫」に絞ってお伝えします。
なぜなら、東京都以外の公立中高一貫校は報告書の配分が発表されていない学校も多く、また、「報告書は参考程度」(=適性検査で勝負!)という学校もあり、あまりに温度差がありすぎるためです。
【都立中高一貫校】報告書とは
都立中高一貫校では、適性検査の点数と報告書の点数を足して「総合成績」という形で合否が決まります。
総合成績=適性検査+報告書
また、報告書には「A、B、C」という3段階の「観点別学習状況」があり、それをもとに「3、2、1」という評定でスコアが決まります。
たとえば音楽なら、
学習状況 | 観点 | 評定 |
音楽への関心・意欲・態度 | A | 2 |
音楽表現の創意工夫 | B | |
音楽表現の技能 | B | |
鑑賞の能力 | A |
このように観点でA、B、Cがつけられ、それをもとに評定が2点となっています。
個別の学習状況があまりにもザックリしているので(例えば「表現の創意工夫」って具体的に何なの?って思いますよね…)、もっと細かく知りたい!という方は、文部科学省の「小学校指導指導要録に記載する事項等【別添1-1】各教科・各学年の評価の観点及びその趣旨」を確認してください。
都立中高一貫校における報告書の配分一覧
次に、報告書の配分を各学校ごとに見ていきましょう。
学校名 | 報告書の割合 | 報告書/総合点 |
桜修館 | 30% | 300点/1000点満点 |
小石川 | 25% | 200点/800点満点 |
武蔵 | 25% | 400点/1600点満点 |
白鷗 | 20% | 200点/1000点満点 |
両国 | 20% | 200点/1000点満点 |
大泉 | 20% | 200点/1000点満点 |
南多摩 | 20% | 200点/1000点満点 |
立川国際 | 20% | 200点/1000点満点 |
三鷹 | 20% | 200点/1000点満点 |
九段 | 20% | 200点/1000点満点 |
富士 | 18% | 200点/1100点満点 |
(九段は都立ではなく区立ですが、報告書+適性検査という仕組みは同じですので、まとめてご紹介しました)
このように、報告書の占める割合が学校により少しずつ差があります。募集要項をしっかり見ておきましょう。
報告書の配分が高いからといって、「この学校は報告書重視だ!」とは一概に言えません。
評点(3・2・1)ごとの決められたスコアが学校により異なり、また、総合点数も学校により800点~1600点まで様々だからです。
評点の与える本当の意味の比重については、別記事でアップする予定です。少々お待ちください!
報告書は担任が書くの?出来上がるまでの流れ
報告書は、受検する学校が配布したもの、もしくは学校のホームページからダウンロードしたものを使用します。
受検者が多いクラスだと、ダウンロードしたデータに入力する方が早い場合もあり、手書きになるか印刷したものになるかは小学校の方針次第です。
- 担任の先生が作成
- 別の先生が何名かでチェック
- 担任の先生が押印
- 校長が内容を確認したら押印→完成!
- 封緘(ふうかん)された状態で渡される(開けちゃだめですよ!)
報告書には評点だけでなく「評価」のコメントや「総合所見」など書かなければいけないことがたくさんあるので、受検シーズンの先生たちの業務量は恐ろしいことになりそうですね…。
報告書は、きっちり封をされた状態で出来上がってきます。開封すると無効になってしまうので、気をつけてくださいね!
報告書の中身
報告書には、評定のように点数化される部分と、総合学習などの点数化されない部分があります。
次は、「点数化されない部分」についても見ていきましょう。
外国語活動の記録
六年生の活動について先生が記述式で書きこみます。
<観点>言語や文化についての体験的な理解
<評価>近隣大学の留学生との交流会で、国ごとに食事や服装などの文化が違うことを体験的に理解した
六年生の一年間で「外国人との交流」「海外の文化についての学習」といった(課外)授業があれば、積極的な姿勢を見せることが重要です。
総合的な学習の時間の記録
六年生の総合学習で行った活動についてどんな力が身に付いたか、先生が記述式で書き込みます。
<学習活動>地域に残る伝統文化や伝統芸能に触れる活動や、体験する活動を通して、地域の良さに気付き、課題について考えたり、地域をより良くするために行動したりする
<観点>必要な情報を収集し、整理することができる
<評価>能楽について体験したことや調べたことを比較したり、関連付けたりして、情報を整理することができた
六年生の総合学習で行われる内容を、どうすればもっと分かりやすくまとめられるか、他にどんな情報があるか検索したり家庭で話し合ったりすると、クラスでの発表がより良くなり高評価に繋がります。
特別活動の記録
5年生、6年生の特別活動について、「満足できる内容」だと判断できたら、〇が付けられます。
- 学級活動
- 児童会活動
- クラブ活動
- 学校行事
行動の記録
5年生と6年生の2年間で、各教科・道徳・外国語活動・総合学習・特別活動、その他あらゆる学校生活の中で「この子はここが素晴らしい!」と思われる項目に〇を付けます。
- 基本的な生活習慣
- 健康・体力の向上
- 自主・自律
- 責任感
- 創意工夫
- 思いやり・協力
- 生命尊重・自然愛護
- 勤労・奉仕
- 公正・公平
- 公共心・公徳心
ここは、すべてに〇が付く必要はありません。〇が各学年1個、2個でも大丈夫です。(逆に全部〇が付いていたらウソっぽいですよね)
出欠の記録
5年生は1年間、6年生は12月末までの期間で計算します。
【出席しなければならない日数】…授業日数ー(出席停止・忌引き等)
【欠席日数】…病気または事故などで欠席した日数合計
総合所見
総合所見には、「この子はどんな子か?何を頑張ったのか?」を具体的に先生が記述します。要はアピールポイントですね!
読書感想文コンクールでは、学校代表として区で入選し表彰された。
小学校生活を通して際立った出来事を記入するので、表彰関係は書きやすいと言えます。
もし表彰されるようなことが無かったとしても、心配しないでください。委員会を頑張ったりクラスの係を一生懸命取り組んでいた、という内容でもバッチリです。
とにかく、「何事にも前向きに積極的に取り組んでいた」ならば、先生も熱意を込めて書いてくれます。
報告書の対象になる期間【6年生は12月末まで】
報告書は6年生の12月31日時点での情報をもとに作成します。
つまり、出来上がるのは受検本番直前、ということですね。ということは…、受検直前になって「報告書大丈夫かな?!」と思っても挽回ができないということです。
受検を意識したその日から、6年生の12月末まで、気を抜かずにしっかりと学校生活を地に足付けて送ることが重要ですね。
また、五年生の通知書(あゆみ)と六年生の一学期までの通知書(あゆみ)をしっかりコピーしておき、いつでも確認できるようにしておきましょう。(※九段は4年生から評定の対象なので、四年生の通知書も取っておきましょう)
通知表の「もう少し」を0にして、1つでも良くしていくことが報告書の底上げにつながります。
「もう少し」がついてしまったら・・・
→何が足りなかったのか、どうすれば上がるのか?
担任の先生に確認しましょう。
報告書の1点は、全体の中では小さな1点ですが、積み重ねれば決定打になることもありえます。12月の最後の最後まで気を抜かないようにしましょう。
報告書の配点の重さの違い
報告書の評定は3、2、1の3段階ですが、それぞれが何点としてカウントされるか、学校によって異なります。
分かりやすく説明するために、評定には【】を付け、総合点数には点という単位を使いますね。
【3】を取るか【1】を取るかで3倍近い差がつくということですね。
ではもう1校見てみましょう。
武蔵の場合は、【1】は【3】の5分の1しか点が入らないということです。
このように、評定によって決められた【1】【2】【3】の関係はずいぶん差があるということがわかりますね。
【都立中】報告書の評定別スコア一覧
では、各学校で【3】【2】【1】がそれぞれ何点になるのか見ていきましょう。
評定+適性検査の総合点は、学校により満点が異なるので、評定の合計が高い(例えば両国)=報告書重視!という訳ではありません。その上でこちらの↓表をご覧くださいね。
学校名 | 【3】 | 【2】 | 【1】 |
小石川 | 25 | 20 | 5 |
白鷗 | 20 | 10 | 5 |
両国 | 55 | 35 | 4 |
桜修館 | 25 | 17 | 9 |
富士 | 25 | 15 | 5 |
大泉 | 25 | 20 | 5 |
南多摩 | 20 | 10 | 4 |
立川国際 | 20 | 10 | 5 |
武蔵 | 25 | 20 | 5 |
三鷹 | 40 | 20 | 5 |
(※九段は最新の募集要項には記載が無いのですが、情報によると【3】を10点だとすると【2】は5点、【1】は1点という【1】に厳しすぎる方針のようです。参考までに)
この表から読み取れることはたった1つです。
「【1】と【3】では何倍も差があるから、【1】は絶対取らないようにする!」以上!
通知表に「もう少し」があった時にやるべきこと
通知表の「もう少し」が多ければ、当然報告書に【1】がつく可能性も高くなります。
以前、ある男の子のお母さんが血相を変えて塾にいらっしゃっいました。
どうやら、通知表が思っていた以上に悪く大変ショックを受けられたとのこと。「もう受検は諦めて出願しない方がいいでしょうか?」と・・・。
しかし、このままだと報告書に【1】が付きそうだからと言って、絶対受からないという訳ではありません。
小問1問分、もしくは大問の半分(部分点)で逆転できる可能性は十分あります。(ただし、【1】が2個、3個以上だとかなり厳しくなってきます)
あとは本番で意識して1問でも多く取れるよう最後の最後まで追い込みをすること、そして万全の状況で検査に臨むだけです。
【1】があったとしても合格発表まではどうなるか分かりませんし、【2】だらけでも同じです。とにかく最後まで粘ってみないと結果は分かりません。
都立中学めざせ合格!報告書を良くするためにできること
適性検査対策は過去問演習など目に見える形で対策ができますが、報告書に関しては、1日の努力で何とかなるわけではありませんよね。
5年生、6年生の2年間が評価対象ですが、児童会や総合の授業などあらゆる場面でジャッジされます。「5年生から頑張ればいいや」「担任の先生の前だけ良い子にしてよう」という考え方ではいけません。
できれば4年生から、細かいことを1つずつ徹底して報告書を底上げする「下地作り」ができると望ましいですね。
「受検のために」「報告書のために」という取り組みは必ずボロが出ます。そうではなくて、「決められたことをちゃんとやる」「どんなことも一生懸命に取り組む」といった、大人になってもその子のためになることを導いてあげて、その結果、副産物として報告書が良くなる、という形がベストです。
ということで、家庭でも取り組めるミニ対策をリストでご紹介したいと思います。
これは、都立中に合格したN君という男の子のお母さんと一緒に当時考えたリストです。現在はもう大学生になり有名な某サッカーチームに所属して活躍しているそうですが、当時はまぁヤンチャでサッカー一筋、その反動なのか通知表は中の下というところでした。
このリストを5年生の夏に作り、取り組んだ結果、4つもあった「もう少し」が完全に無くなり、学校だけでなく塾での姿勢も明らかに変わってきました。
適性検査も波があるタイプ(特に作文)で模擬試験でもギリギリのラインの子だったので、報告書を底上げしていなかったらどうなっていたか…と思います。
簡単なリストなので、ぜひ実践してみてくださいね。
★報告書を底上げするための6か条★
①忘れ物をしない
-日々の持ち物チェックリストを普段目につくところに貼る
(毎日のもの、毎週のもの、月1回のもの、と分かりやすい表だと◎)
-特別な持ち物(その日だけ持っていくもの)は連絡帳に必ず書く
②遅刻をしない
-常に時間に余裕をもって行動する
③授業をちゃんと聞く
-授業に関係のないことはしない。塾の宿題をやらない!(結構います…)
-授業中は先生の目を見る(これは通知表アップ効果大です)
④小テストをおろそかにしない
-常に100点にこだわる
⑤提出物の締切を守る
-締切情報は家庭で共有して、家族からも声掛けを!
⑥宿題をやる
-宿題をやるのは当たり前。塾優先になりすぎないこと
当たり前のことばかりですが、それをおろそかにしないことが重要です。
報告書の点数で繰上り合格になるかどうかが決まることもあります。上のリストを軸に、ご家庭のフォローをよろしくお願いします。
都立中高一貫校【報告書対策】まとめ
今回は、都立中高一貫校合格に欠かせない報告書の基礎知識と底上げ方法について紹介しました。
ご家庭でできるフォローは、日々学校生活を送るうえで持ち物や宿題など声掛けをすること(きつい言い方をすると、「目を光らせること」)が一つ。
そして、五年生以降は担任の先生とよく連携しておき、一丸となって報告書を底上げする体制を取ること(あえて意地悪な言い方をすると、「報告書のためのプレッシャーをかけること」)。
あとは、総合学習の時の調べものをする時は、積極的に家族で協力して資料集めのヒントを与えたり、外国語学習に前向きに取り組めるよう習い事や交流会などのアンテナを常に張っておくこともプラスに働きます。
公立中高一貫校受検は、とにかく家庭の応援あってのものですから、ためになることは何でもフォローする体制を取りましょう。
とはいえ、「学校生活をおろそかにしちゃダメよ」という話は親子間では(言い過ぎて)伝わらないこともあるかと思います。私が子供の時もそうでしたから(笑)
なので、YouTubeで「ケイティからのメッセージ」という形で受検生向けに動画を録りますので、ぜひそちらもうまく利用してくださいね!
合格目指して引き続き頑張っていきましょう!